埼玉県住宅供給公社

相談事例集

契約不適合責任

契約不適合責任

契約不適合責任とは何ですか?
令和 2 年 4 月 1 日に施行された改正民法では、これまでの「(隠れた)瑕疵」という文言から「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない(契約不適合責任)」という文言に改められました。
改正前の民法では住宅の売買に関する「隠れた瑕疵」としては、例えば土壌の汚染、建物の白アリ被害や雨漏りといったことが該当しますが、こうした事象が存在した場合、売主は瑕疵担保責任を負う、つまり買主の損害を賠償することや場合によっては売買契約が解除される、というものでした。
改正民法では、上記の損害賠償のほか、一般原則に基づく契約解除以外に、履行の追完や代金の減額請求が定められました。ただし、売主に故意・過失がなければ免責されることになりました。

履行の追完請求

新築建売住宅を購入しました。システムキッチンに備付けの食器洗浄乾燥機が故障していることに引渡を受けてから気が付きました。
売主である住宅販売事業者に対し、食器洗浄乾燥機の修補か交換を請求することができます。

代金の減額請求

賃貸マンションに居住しています。給湯器が故障したので、貸主にその旨連絡したのですが、1 週間経過しても、貸主からは修理の連絡がありません。夏場の事なので、近くの入浴施設を利用しています。
給湯器が故障してから実際に修繕・交換が完了するまでの期間から、免責期間として考えられる期間(通常の発注から修繕・交換に要する期間)を差し引いた日数に応じて計算された金額相当分を家賃から減額するよう貸主に請求することができます。また、その間は入浴できなかったので、入浴施設を利用したことによる金額も請求することができるでしょう。

権利行使の期間

損害賠償請求などの権利を行使することができる期間は、どう変わったのですか。
改正前の民法では、瑕疵を知ってから1年以内に損害賠償請求などの権利行使が必要でしたが、改正後は、不適合を知ってから 1 年以内にその旨を売主に通知(売主が対応を検討できる程度の不適合の種類や範囲を知らせるもの)すればよくなりました。

中古住宅売買での契約不適合責任について

令和5年(2023年)に個人の売主から中古住宅を購入しました。契約内容は現状有姿での引き渡しで、契約不適合責任期間は3か月とされておりましたが、売主の告知に雨漏りの記載もなかったので比較的良い物件と思い契約・購入しました。しかし住宅引き渡しを受けてから1年経過後、予想もしなかった雨漏りが発生しました。売主に対して補修請求を求めることはできますか?
令和2年(2020年)4月1日に施行された改正民法下での中古住宅売買の契約ですね。ご質問の場合、基本的に契約書に定められた契約不適合責任期間を超えているため、売主に契約不適合責任を追求することはできないでしょう。なぜなら民法で定めた「契約不適合責任」は任意規定のため、売主と買主の合意で民法とは異なる取り決めもできるのです。取り決めを特約として契約書に記載されれば、民法の規定ではなく特約の内容が優先されるからです。売主が個人の場合は、このように「契約不適合責任」の免責や制限する特約を設けていることが多いようです。
但し、売主が雨漏りを「知りながら告げなかった」ようなケースでは契約不適合責任を免れることはできないこともあり得ます。(民法572条)
なお2018年より中古住宅売買においては、媒介契約時に宅建業者は建物状況調査※を実施できる事業者のあっせんの可否を示し、希望者にはあっせんすることになっております。また建物状況調査を実施している場合は、宅建業者が重要事項説明時に買主に説明する義務が課せられています。中古住宅の売買に当たっては、契約前の綿密な内見、建物状況調査、既存住宅瑕疵保険に加入するなどの備えをすることが望ましいです。
 
※建物状況調査:国交省の定める講習を修了した建築士が国交省の定める基準に従って、建物の状況を調査する